小説や映画が大ヒットした「ダビンチ・コード」によって、正典として聖書に収録されている文書以外に外典が存在することが広く知られるようになりました。1945年に発見されたナグ・ハマディ写本と呼ばれる一連の外典文書が同小説の重要なモチーフになっています。
外典は、正統とされるキリスト教の教義とは相容れない内容を含んでいるため、キリスト教会から異端だとして退けられてきました。
正統なキリスト教には、三位一体や処女降誕、死者の復活など、現代人にとって理解しがたい教義があります。外典の中には、その立場をとらず、神とイエスと人間の関係がより理解しやすく説明されていて、驚かされるものもあります。
ナグ・ハマディ写本の研究で名高いプリンストン大学のエレーヌ・ベイゲルス教授は、次のようなことを言っています。
「聖書は揺るぎない真理がいくつも盛り込まれていますが、すべてを文字通りに受け取る必要はありません。新しい資料を契機にして、より深く探求することこそが重要なのです。それが真摯な信仰姿勢であり、イエスが望んでいることでもあるでしょう」
さて、本題です。
本作には高い評価がある一方、正典(解散前に制作された作品のみ)を冒涜するものだと酷評する人たちもいます。正典とか冒涜などという言葉は、宗教に関して使われる言葉です。もはやビートルズは宗教なのですね。ここ数年、別テイク、プライベート版などの未発表音源やリマスター、リミックスなどが発表され、従順な信者は、ありがたく拝聴してきたのでした。たとえそれが安易な企画やひどい音質であったとしても。
しかし、ビートルズのあらゆる音源を徹底的に吟味し、最新の技術を駆使して解体・再構築した本作は別格です。確かに外典ではありますが、極上のエンターテイメントであると同時に、ビートルズとは何であったのかという本質に迫るための超一級資料とも言えるでしょう。(2006.12.15)