英国でしかありえない湿り気と米国ルーツ音楽の疲労感を同時に表現できた稀有なバンドです。彼らの出自はサイケデリックなヘビー・ブルーズを演奏していたバンドであり、米国人のゲイリー・ライトが加わったことによりソウル、スワンプとの融合が期せずして実現したのかな、と思っています。実は、彼らの特徴を語ることは容易ではありません。メンバーが激しく入れ替わったこともあり、アルバムごとに音楽が変化していったからです。曲やバンド名が著名であるにも関わらず、彼らの作品を聞いた人はあまり多くないでしょう。どれから聞いたらよいのかも迷います。
丁寧な選曲をしている、この2枚組があれば、彼らのキャリアをカバーするには十分だと思います。シングル曲や未発表曲まで収録しています。逆にオリジナル作を揃えているコアなファンにとっても有用なオムニバスであります。「ザ・ミラー」収録曲の音質は流通しているものと比べても格段の差です。また、カバーデザインは「It's All About」のアウトテイク写真であることが明らかです。
Disc: 1
1. Weird シングル「Sunshine Help Me」のB面曲で、スプーキーの前身バンドArtの「I Think Im Going Weird」を再演。
2. Sunshine Help Me ゲイリー・ライトが初めて書いた曲で、ムーブ、ELOのカバーがあります。
3. Society's Child 67年、若干16歳のジャニス・イアンのヒット曲。黒人と白人の少年少女の悲恋をテーマにした曲を彼らはデビューアルバムのオープニングに選びました。ジャニスのヒットから翌年のことです。何か深い意味合いがありそうです。
4. It's All About a Roundabout ゲイリーとマイク・ハリスンが競うように熱唱する名曲。
5. Here I Lived So Well グレッグ・ライドリーのメロディを弾くベースとチャーチ・オルガンが印象的で幻想的な曲。コーラスも見事です。バークレイ・ジェームズ・ハーベストあたりが演奏しそうです。
6. Tobacco Road 「ザ・ナッシュビル・ティーンズ」のヒット曲で、ブリティッシュ・ビートだった曲をヘビーにアレンジ。アニマルズ、ジェファーソン・エアプレーン、エドガー・ウィンターなど多数のカバーがあります。
7. Love Really Changed Me プロデューサーであるジミー・ミラーの曲。60年代後期のストーンズのアレンジに似ていると思います。
8. Luger's Groove シングル「Love Really Changed Me」のB面曲。ラテン風のインストゥルメンタルです。
9. The Weight 言わずと知れたザ・バンドのカバー曲で、シングルのみだったもの。1コーラスをマイク・ハリスン、1コーラスをゲイリー・ライト、1コーラスをデュオで。二人の歌唱力が光ります。
10. When I Get Home 、11. Something Got into Your Life ファースト・アルバム制作時のアウトテイク。
12. Lost in My Dream 「スプーキー・トゥー」収録曲のミックス違い。
13. Better by You, Better Than Me ジューダス・プリーストがカバーしたことで一番の有名曲かもしれません。
14. Waitin' for the Wind これもスプーキーを代表する名曲。フォー・ビートがしばらく続いたあと、重厚なオルガンから曲に入ります。ブラック・サバスの「ジプシー」は、この曲からアイデアをとっている気がするんですが…。
15. Feelin' Bad セカンドの中では地味な印象ですが、静かなアコースティック・ギターからリバーブの深いピアノとコーラスによって劇的に展開するとてもスプーキーらしい曲です。
16. Evil Woman 原曲はラリー・ウェイス(米国のシンガー)で、ほかにトロッグズ、キャンド・ヒート、クワイエット・ライオットなどがカバーしています。ゲイリー・ライトのファルセットが黒っぽいです。
17. Hangman Hang My Shell on a Tree スワンプの影響が色濃くにじむ曲で、コーラスしながら徐々に盛り上げていく手法が際立ちます。
18. Oh! Pretty Woman オランダで出た「That Was Only Yesterday」シングルB面曲。アルバート・キング作。ルーサーのルーズなギターが重くかっこいいです。ゲイリー・ムーアのカバーでも有名。
Disc: 2
1. Hosanna 仏の現代音楽家ピエール・アンリとの共作「セレモニー」から。
2. The Wrong Time 「The Last Puff」制作前に脱退したゲイリー・ライトの置き土産。マイク・ハリスンの歌い方はよりR&B寄りになっています。
3. I Am the Walrus ビートルズの曲をヘビーかつルーズにアレンジ。
4. Son of Your Father エルトン・ジョンの曲。
5. The Last Puff プロデューサーのクリス・ステイントン作。
6. Wildfire、7. Times Have Changed、8. Cotton Growing Man 「ユー・ブローク・マイ・ハート」から。ゲイリー・ライトが復帰。ギターのミック・ジョーンズは、ライトのバックバンドからの参加でした。
9. Ocean of Power、10. As Long as the World Keeps Turning、11. Things Change、12. Sunlight of My Mind 「ウィットネス」から。
13. Fantasy Satisfier、14. Higher Circles、15. Hell or High Water、16. The Mirror ラスト作の「ザ・ミラー」から。プロデュースは彼ら自身とエディ・クレーマーです。マイク・ハリスン脱退、マイク・パトゥ参加です。