Gretchen Parlato(グレッチェン・パーラト)は米ジャズ・ヴォーカリスト。2004年Thelonious Monk Competitionヴォーカ
ル部門で優勝。NYのフリーペーパー「DownBeat」誌で毎年行われる、評論家によるジャズ・ミュージシャン投票「Ann
ual Critics Poll」2010年版では、ヴォーカル部門の第2位に選出される等注目が高まる実力派。
GretchenをNorah JonesやMadeleine Peyroux辺りと比較する向きもある様だが、彼女の場合もっとジャズ寄りな印象。
さらに彼女が強く影響を受けたと思われるのがボッサを始めとしたブラジル音楽。流れる水の様にさらさらと言葉を囁き
だす歌い方はAstrud Gilbertoのよう。彼女の涼やかなソプラノ・ボイスはブラジル音楽ファンにも愛されると思う。
本作は彼女の自作曲を中心に、自らの師Wayne Shorter作の「Juju」からR&B歌手Mary J.Bligeのクラシック「All That I
Can Say」のカヴァーまで彼女の音楽嗜好がよく表れた選曲となっている。
今回バンド・メンバーの肝として若手ピアニストのTaylor Eigstiが入り、諸鍵盤楽器で大いに活躍。前作を聴いていない
のでAaron Parksとの比較は出来ないが、Eigstiの雄弁ながら熱し過ぎない演奏は音楽に深みを与えており聴き応え十
分、Gretchenの声との相性も良い。
さらに特筆すべきがGretchen自身のソングライティング能力の高さ。どの曲も記憶に残る美しいメロディを持ち、著名な
カヴァー群と並べても決して劣らない。
初盤の驚きは「Winter Wind」、3拍子にて躍動するドラミングとバスの上をEigstiのたっぷりとしたピアノ・フレーズとGret
chenのほのかに香る様な歌が交互に舞い上がる極上の抒情詩で、終盤への盛り上がりは実に感動的。Gretchenの粋
なスキャット、Eigstiによる洒脱なローズ演奏が聴く側の体温を確実にクールダウンさせる「Me and You」は快感だし、原
曲より速度を上げ、コードを差し替えたことで新しい味わいを産んだ「Blue In Green」も良い。カヴァー「All That I Can Sa
y」では、原曲のどたどたしたヒップホップ・ビートを生ドラムで置き換えよりシックで落ち着いた雰囲気に仕上がっている。
これからの蒸し暑い季節、音の清涼剤として重宝すること請け合いの逸品。彼女の涼しげな歌に癒されてみては?