リリースが1978年というパンク/ニュー・ウェイヴ最盛期だったせいで、不当に過小評価されてきてしまった名作。確かにここで聴かれる落ち着いたサウンドは、当時のイギリスの過激な音楽シーンに受け入れられるものではなかっただろう。だが、ポールのファンならこのアルバムがキライという人はまず居ないはず。バラエティーに富んだ曲調、メロディの素晴らしさ、巧みなアレンジ、そしてどんな曲でも歌いこなしてしまうポール自身のヴォーカリストとしての圧倒的な力量・・・と、この一枚で彼の魅力がたっぷり堪能できる。中でも「I'm Carrying」はジョージ・ハリソンも「センセーショナル」という言葉を使って絶賛していた名曲。全体的にソフトでアコースティックなタッチの音作りがされており、レコーディング終了後に脱退してしまうギタリストのジミーとドラマーのジョーもその確かな演奏力で色を添えている。このアルバムやライヴ盤「Wings Over America」を聴くたびに思うことだが、当時の最強ラインナップによるウィングスの来日公演が実現しなかったのは本当に残念としか言いようがない。聴き込むほどにその良さがじんわりと伝わってくる一枚。