小さな恋の、そして小さな勇気の物語。
読んでいる最中、小学校高学年の頃に親に対して抱いていた感情や、そっくりそのまま校舎に置き忘れてきてしまった友情、あるいは当時の淡い恋心など、様々な記憶の断片がたびたび一瞬フワッと蘇り、そしてすぐに消えていった。読み終わったあとは、ただみずみずしさだけが、心地良く残っていた。この感覚を、どうにか言葉を操って伝えたいのだけれど、それは僕の貧困なボキャブラリーでは筆舌しがたいほどで…。そこで言葉以外の表現方法を借りるならば、カバー写真が、まさにこの本のイメージにぴったりであり、その映像センスには脱帽する。この後読感は、カバー写真から感じる感情そのままと言ってもいいかもしれない。
職場の友人の女の子から、こんな体験談を聞いたことがある。その子が故郷から就職のために上京し、はじめて東京の自分のマンションに入居した際、まだ空っぽのはずの自分の部屋の中に、一冊の本がポツンと置かれていたという。その部屋にそれまで住んでいた人から、新しく住む彼女への贈り物というわけだ。それは、まだぜんぜん世間で話題になる前の”セカチュー”だった。お洒落な話でしょ?
単純な僕は、次に引っ越しをする時、これを真似しようと思っている。この本は、その第一候補だ。