売れ線狙いのポップスでもなく、誰かの物真似R&Bでもない。ここでしか聞けない、芳醇な音楽世界。
AOR/フュージョンの洗練された音世界に彼らがたどり着いた傑作アルバムだ。
古い手触りを残しつつ絶妙に「今」(コンテンポラリー)の音を作り上げた今作のプロデュースは、
トミー・リピューマ。
マイルス・デイヴィスや、ジョージ・ベンソンの「Breezin’」で有名な彼は、A&Mでニック・デカロと
ソフト・ロックを作り上げ、クロディーヌ・ロンジェやロジャー・ニコルズなどの傑作を送り出し、
多くのロック・ポップスの良質な作品にかかわったプロデューサーであり、現在は、Verveの会長でもある。
そんな彼の資質と、EBTGの嗜好が完全にマッチし、この傑作が生まれた。
1曲目から5曲目までは、ネオアコの曲調を残しつつ、豪華なバックに盛り立てられ豊かな後味を残す仕上がり。
後半はより深さを増し、ゴージャズ路線の頂点を迎える。
次の作品でまたもやシンプルな路線に回帰する彼らは、時代の流れと自らの趣味に非常に忠実なのである。
ネオアコの賞味期限が切れても、核の部分を残しつつ次々にスタイルを変え、時代のコンテンポラリーを上手にすくいとっていく。
そうした彼らのまさに面目躍如のアルバムで、秋の夜長や春の木漏れ日に耽溺したい暖かな名作。
愁いを帯びたトレーシーの歌声が、いかに各方面から愛されるものかも分かる一枚だ。