本書は、大学理工系学部の学生に向けて書かれた「論文の作法」の入門書です。「LaTeXユーザのための」と銘打っていますが、本書の眼目はあくまで論文作成の基本的な約束事や心構えを説くことであって、LaTeXについては「…という書き方をLaTeXで実現するにはこうすればよい」という説明にとどまっています。その意味で、読者はすでにLaTeXの基本的な使用法を修得していることが前提であり、LaTeXの使い方の説明を本書に期待してはいけません。
論文を書くための知識・技術は、「内容」と「形式」に大別されますが、本書が扱うのは主に「形式」です。「内容」とは、筋道だった文章を書くための「作文技術」で、これについては、木下是雄著「理科系の作文技術」など他書で学ぶべきです。本書は、論文作成の「形式」に関する基本的な約束事として、参考文献の記述法、論文の構成、科学技術文書のための望ましい文章表現、用字用語・句読点・記号類の使い方、数式の記述方法などを説明しています。
本書が想定する読者は、「卒業論文を書かなければならないけれど、論文の書き方がわからない」という学生です。実際、ほとんどの大学生は、論文の書き方について「内容」「形式」のどちらの知識・技術も学ぶ機会がないまま卒業研究を始めているのではないでしょうか。本書は、論文の書き方の「形式」に関するマナーやルールを説くことで、卒業論文の書き方に迷っている学生を手助けすることを意図しています。
卒業論文だけでなく、大学の講義・演習・実験などのレポートを作成する場面でも、この本に書かれている知識は十分役に立つでしょう。
逆に、大学院修士課程以上、すなわち研究者として論文を書く立場の人にとっては、本書の内容は全く不足です。第7章で、「研究論文に向けて」と題して、投稿論文や英語論文の書き方にも少し触れていますが、これはあくまで大学院に進学する学生に対して「心構え」を説くものであって、大学院生であれば本書の内容はすでに身につけて「卒業」していなければなりません。