彼女の過去のアルバムがすべて「足し算」のアルバムだとしたら、今回のアルバムは「引き算」のアルバムだ。アレンジにしても、歌詞にしても、曲のラインナップにしても、そんで、ジャケットにしても。
今まで大塚愛は、とにかく良くも悪くも「彩られたアーティスト」だった。時にポップに、時にシックに、時にサイケデリックにと、音楽的にもビジュアル的に七変化を生業としてミュージシャン道を渡り歩いてきたのは、何年か前に発売された彼女のベスト盤を視聴すればわかると思う。そして前回のアルバムも、『クムリウタ』『恋愛写真』といったシングル曲でスピリチュアルな一面を開拓しつつも、アルバムコンセプトに良い意味でとらわれない柔軟性を発揮している。大塚愛は、こういう「変わり身」を否定的に捉えられることの少ない、珍しいタイプのアーティストなんである。
しかし、そのスタイルで成功を収めるためには、必ずどこかに「一貫性」がなければならない。全てが不安定なミュージシャンに、ファンが定着するわけないでしょ。大塚愛の場合は、「音楽性」がそれだ。アレンジやリズム、歌詞の雰囲気といった「表面」は、確かにめまぐるしく変化をするものの、その根底に秘めている音楽的思考ベクトル、つまり「いろんな形の愛を描く」という方向性は絶対にブレない。そりゃまあ、その表現の巧拙に波はあったりするけれど。
今回のアルバムでは、その「根底に秘めているもの」を表現する手段として今まで取り組んできた「七変化」を、極力避けている。その意図は情報収集不足でわかんないけど、全体的なアレンジにしても、ピアノのサウンドやフレージングを大切に前面に押し出した曲が増えた。これはつまり、今までの曲からバンドなどによる「飾り」を極力取っ払ってみようという「引き算」の意図だ。さらに、そういった意識が、アルバムの楽曲群からも「派手さ」を引いている。
そしてジャケット。彼女のアルバムにしてはびっくりするほどシンプルだ。けど、このジャケットの彼女の表情が、このアルバムがいかに「削ぎ落とされたもの」なのかを雄弁に物語っている。とにかくもう、自然体。落ち着きます。
結論を言えば、今回の大塚愛の試みは大正解だと思う。初めてアルバム単位で「さらけ出した」彼女を見られたことは、リスナーにとっても貴重な体験に違いない。良いアルバムですよ。
ただ、大塚愛のボーカルがさらに「持田香織化」している曲が目につくのが惜しい。てことで星4つです。