2000年4月の発売ですから10年前の収録ですが、今も昔も凄い歌唱だな、と感じさせる曲の連続です。雄弁ですし、それでいて繊細です。「魂の叫び」を披露した後の空白の時間を埋める絶妙のピアノ。ジャズというジャンルを超えて、本物しか持ち得ない凄みに圧倒される思いです。
リーフレットの楽曲の解説はいつものアヤドが絶妙の語り口で語っており、ステージ同様笑わせます。村松友視の「眩暈の中で」というアヤド讃歌ともいうべき文章が温かく秀逸でした。
8曲目の「悲しみのジェット・プレーン」が大好きです。最愛の恋人と別れを惜しみながら、ジェット機に乗って飛び立っていくという歌です。アヤドの切々とした歌声が原曲を上回る感動をもたらしてくれます。オリジナル曲とは全く雰囲気の違う仕上がりのアヤド節がオススメです。
軽快な「どんなときも」からは「人生、そんなに捨てたもんやないで」という語りが聞こえてきそうです。生きるエネルギーをリスナーはもらえそうです。
「My Funny Valentine」の歌唱はジャズ歌手の範疇というよりも表現力豊かなブルース・シンガーでした。人生の辛酸をなめ、乗り越え、たくましく生き抜いているアヤドの真骨頂が炸裂した曲ですね。
ほかの収録曲もそうなのですが、綾戸智絵にスロー・バラードを歌わせたら天下一品です。「Danny Boy」のどこか懐かしくて物悲しい雰囲気がたまりません。
全曲がスタンダード・ナンバーですし、ポップスもジャズも全てアヤド色に染め上げられています。オリジナルを知っている曲ほど驚きの展開がなされており、それぞれどのように歌いまわしているかを聴く楽しみは堪えられません。