オランダの大画家レンブラントの生涯と彼の画業、作品の特徴等を代表作<夜警>等豊富な図版で紹介しながらまとめられた入門書風の文庫本です。
私も本書で言及されている2002年の『大レンブラント展』は観させて貰ったので、読みながら展示室の壁に映画館のスクリーンのように掛けられていた巨大な絵画<サムソン>の大迫力を思い出して感慨を覚えました。有名な自画像や息子テティウスの絵、テュルプ博士の解剖学講義等も載ってますがルーブル美術館で観て感動した<ユディト>が載っていなくてちょっと残念。
本書で扱われている作品は、現在開催中の『光と、闇と、レンブラント』展に出展されているものが多いです(とはいえ<夜警>は来ないですが!)。私はこれから同展を観に行くので、本書を鑑賞前の予習として有難く使わせていただきました。
本書は、レンブラントが生きた時代のオランダ−故郷レイデンや工房を構えたアムステルダムは勿論、オランダ独立戦争(80年戦争)等のマクロな時代背景まで−の当時の芸術家の社会的地位や役割、影響、流行っていた絵画の様式やまた工房のシステムや経営の様子なども解説されており、時代の雰囲気を感じ取れます。
また、欠点も多い一人の人間としてのレンブラントと、存命中・死後を問わず評価やキャリアの浮沈を経験しながらも(一般にレンブラントの生涯に関しては、私生活も仕事も順調な栄光の前半生、家庭崩壊と、リアリズムに基づいたレンブラント絵画が批判されていく悲惨な後半生というのが定説であったらしいですが、著者は同時代人から最後まで一流の画家として注文を受けていた事実などを挙げて、定説に異を唱えています)天才としてのレンブラント、両方の顔も知ることができます。
当時レンブラントも自画像などで描いたトローニーという絵が流行したことや、レンブラントはエッチングも素晴らしいものを残しているということ、またラファエロやティツィアーノらイタリアルネサンスの巨匠たちから触発を受け彼等の描き方を研究して自分の画力を高めていたという事等は初めて知りました。
現在のレンブラント研究の模様や成果についても記述があり、これまでレンブラント作と言われていた作品が、レンブラントの工房で師匠の手本を参考に有能な弟子達が描いたものだと分かってきている等の新しい情報も手に入れることができます。
また、レンブラントが事実を理想化する古典主義的(また新古典主義)のスタイルではなく、女性の弛んだ肌や腹部まで徹底して事実を大切にして描くスタンスで評価され、晩年そういう描き方が流行らなくなっても生涯その姿勢を変えなかったということには、考えさせられるものがありました。
図版が充実して値段的にもお手ごろですし、文章もすっきりとしていて読みやすいので、「ざっくりとレンブラントの基礎情報を知りたい」私の様なビギナーの方にはお勧めの本です。