出版社/著者からの内容紹介
――“秋だ。誰も知らない京都へ行こう”――!!
美人舞妓が闊歩する、夢のような観光の大都。
モラトリアム大学生の気風に溢れる、けだるい自由の街。
1300年の伝統を誇る、碁盤の目の街区。
――多様な顔を持つ京都には、けれど、隠された顔がいくつもある。
あるときは「はんなり」と雅に。
そしてまたあるときは冷ややかな「いけず」に徹して。
「京都らしさ」を求めて近寄りすぎれば、やんわりとはぐらかされる。
「京都らしさ」にとらわれるのを嫌えば、かえって京都にとらわれていく。
訪れるひとを魅了し、惑わせ、必ずとりこにしてしまう、
“よそさん”歓待の不可思議な掟。
憧れを胸にやって来る異邦人。
先祖代々からの生活者。
青春モラトリアムを満喫する学生。
あるいは、青春時代の記憶の礎を街のそこここに残していった大人たち。
ある者は深い愛を込め、
ある者はおののきをにじませ、
ある者は激しい憎しみとともに、
みな、それぞれの「京都」をこころに住まわせている。
――京都よ、お前はいったい何者だ?
京都文化の異端児・京都精華大学が発信する、驚天動地の全く新しい京都本、ここに登場!
内容 《KINO vol.3『よそさんにはわからない京都の正体』》 <第一部>
【特集“京都ネイティヴが語る京都”】
・李鳳宇(映画『パッチギ!』プロデューサー)×中村真夕(新鋭女流監督)が語り合う『映画に描かれる鮮やかな京都』
・新鋭カリスマ人気劇団・ヨーロッパ企画の『まったり京都から発信する新しい演劇』
・伝説のフォーク歌手・中川五郎の『愛と憎しみの京都試論 ~京都人になれない~ 』
・“突破者”宮崎学のアンチ京都宣言『私は京都の《いけず》が大嫌いだ!』
・吉本新喜劇の笑いを作った男・木村政雄の京都お笑い文化論『日本一難しいお客、京都人』
・書評家・岡崎武志が指南する『京都古本ストリート・予算0円の路地歩きガイド』
<第二部>
【発見・京都!! 記事・コラム・エッセイ】
・“生粋の京都人”みうらじゅんが語る『ボクの好きな京都』
・“京都在住人気漫画家”グレゴリ青山の『イラスト図解・京都人間図鑑1~12』
・よそさんたちが暴露する『実録!(爆笑)京都人の正体』
・三百年の老舗旅館+天才写真家アーネスト・サトウの秘史『俵屋の謎』
・京都オモシロ考現学『なんやコレ!! 京都 ~孤高の京都タワー、仏具街ワンダーランド、他~ 』
・いったいあなたはどのくらい京都人? 『京都人度チェック・チャート』
・京都の食の起源は学食にあり? 『京都・大学学食パノラマ名店街』
・古都のイコン『公衆トイレ・のれん・銭湯・明治の名建築 周遊ガイド』
・こんなんありました! 『世界的人気! 外国人観光客向けオモシロ土産・一覧』
抜粋
『京都の不思議、俵屋の謎』
<アーネスト・サトウと京都>
京都で三百年の歴史を持つ俵屋旅館、そこで暮らした「ライフ」誌のカメラマンを知っているだろうか。日本人の父とアメリカ人の母を持つアーネスト・サトウが、俵屋に遺したものはなんだったのか。
――外国人として暮らした京都は、アーネストにとってハッピーだった。でも生活者として暮らす京都は辛いことのほうが多かったでしょう。――
俵屋の二階にあるライブラリーで、柔らかそうな生地の黒いパンツスーツを着た婦人は、座りごこちのよさそうな椅子に近づくと、ひょいと両足を上げ、横座りに腰をおろした。
「初めまして。ごめんなさいね、ちょっと足が痛いからお行儀悪くて」
彼女は彼のことをこう話し始めた。
「彼はね、外国人として京都を見ているときは、ハッピーだったと思います。でもね、そこに住むとなればね…いろいろ辛かったと思いますよ」
婦人の名は佐藤年さん、京都に俵屋ありと世界に知られ、三百年の歴史を持つ老舗旅館の主人である。
一般に思い浮かべる「京都老舗旅館の女将」の印象はまったくない。むしろ、銀座の画廊の女性経営者、とでも言われたほうがしっくりくるかもしれない。
さて、「彼」の名は、アーネスト・サトウという。
「アーネスト・サトウ」と聞けば、おそらく、多くの人が、幕末から明治維新にかけて、駐日公使館の通訳として活躍した英国人を思い起こすだろう。彼もまた、親日家で、「佐藤愛之助」という日本名を名乗ったこともあるが、佐藤さんの言う「彼」は、もうひとりのアーネストのことだ。
アーネスト・サトウは、年さんのご主人だ。亡くなったのは一九九〇年。もう十六年が経つ。――――