スティーリー・ダン=ドナルド・フェイゲンのアルバムのなかではそれほど人気のないアルバムのようです。その理由も想像できます。
彼らは『Aja』以後、緻密に計算された完成度の高いサウンドに磨きをかけてきましたが、その磨きかたが極限まで達し、このアルバムになると参加ミュージシャンにはすべてコンピュータに匹敵するほどの正確さが要求され、まるで打ち込みのようにも聴こえる演奏になっていきます。メロディーが後退し、人間的な情緒の面がバッサリと切り去られているようにも聴こえます。
だいたい、『Aja』あたりを彼らの最高傑作とする人が多いのは、『Gaucho』以後のサウンドの磨かれかたについていけず、まだ人間的な暖かみが残っていた『Aja』あたりが一番好みに合うという人が多いからでしょう。
どのへんが自分の口にあうかを理由にどれをベストかを選ぶのなら、聴き手ひとりひとりが勝手に自分にとっての最高傑作を選べばいいわけですが、方法論を極限まで突き詰めた作品こそが最高傑作だとするなら、間違いなくこのアルバムこそがスティーリー・ダン=ドナルド・フェイゲンの最高傑作です。
僕も最初聴いたときは違和感を感じたのですが、何度も聴いているうちにこのサウンドが快感におもえてきて、かえって『Aja』を聴くと「この頃はまだこんななまぬるいことをやってたんだな」と思うようになりました。(といっても『Aja』を何度も聴きかえせばまた「これはこれでいいな」とおもうのですが)
この後フェイゲンはスティーリー・ダンを再結成してライヴ活動をはじめ、以後のアルバムはライヴでの演奏性を反映したものとなっていくので、計算されつくしたような緻密なサウンドという面では後退します。