ジュードとスーの二人の悲劇的な人生は運命によるものなのか、それとも本人たちの意思によるものなのか、生きることの難しさを教えてくれる小説です。小説にはどんよりとした薄暗い、身を切るように寒いイギリスの田園風景が詳細に描かれ、まるで主人公達の狂いだす人生の歯車と悲劇を予感させるものです。小説の始め、若く純粋なジュードとスーの意思は理想へと向かっていましたが、そのうち理性と感情の激突の中で二人の人生は破滅へむかいます。避けることのできない精神と欲望という対立の中で、二人は精神的なものを追求し、お互いの夢を持ちながら、家族のため、二人の愛と共に生きようとします。ここには、個人と社会集団との調和の問題が提議されています。二人の選択は精神の追求ではありましたが、肉欲的なものを消し去ることができない主人公達は家族や夢、愛を次々と失っていきます。二人にとって理性と欲望は切り離せないものであり、ジュードとスーの悲劇は、理性と欲望の不調和の結果と考えられます。さらに、小説では主人公達の意思と感情の葛藤を細かく描写することで、二人の人生が本人の意思選択により決定されていると考えられます。しかし、主人公達を不幸に陥れる環境を考えると、人間の力をこえた運命に翻弄されているとも考えられるのです。このように、小説は人間の感情と理性という葛藤を愛や家族との関係のなかで描いているのです。