オブジェクト指向を否定する意見には、現実の開発者にこの段階での設計力がないために、再利用をするクラスの設計など不可能であるという意見がある。しかし、すぐれた設計者の設計思想を知り、自分のものにすることで、より安全性が高く適切な制約を持ったクラス設計ができるようになる。そのための定石が記述されているのが本書である。カプセル化、継承、ポリモルフィズムというオブジェクト指向の基本から始まり、オブジェクトの生成、コレクション、イテレータなどの効率の良いプログラムを作るための設計原則までが解説されている。各原則は、詳しいサンプルプログラムとその説明、わかりやすいクラス図で解説されている。
本書は、Java言語は理解したが、オブジェクト指向設計という段階で、いまいちピンとこないと思っている人におすすめの1冊である。特に、Javaの持つ能力を自在に操りたいという目的意識のある人には最適であろう。(川藤一真)
本書は,より柔軟で堅牢なJavaプログラムを書くためのツボを,「格言」という形で,設計レベルからコーディング・レベルにわたって伝授してくれる。本書の「格言」は,3つのレベルに分類されている。Javaの言語仕様に起因する,一見見落としがちな「規則」,より優れたJavaプログラミングを実現するための「設計原則」,そして,解決への道筋を提供してくれる「ヒント」の3つのレベルだ。
前半では,カプセル化,継承,ポリモルフィズムといったオブジェクト指向プログラミングの「格言」を解説している。継承と委譲の使い分け,抽象クラスとインタフェースの違い,ポリモルフィズムによる変化に強い拡張性の高いコードの作成テクニックなどが解説されている。「はじめに」で著者も勧めているが,これらの章は,オブジェクト指向の基礎をすでに理解している読者も,是非一読してみることをお勧めする。私もそうだったが,きっと新たな発見があると思う。
後半では,コールバック,オブジェクト・ファクトリ,コレクション,イテレータといったさまざまな設計パターンを扱っている。たとえば,クラスのロードとオブジェクトの生成に関する章では,Javaに特有なクラス・ローディングとオブジェクト生成のメカニズムを解説し,これらのメカニズムを使ってオブジェクトを動的に作成する方法を伝授してくれる。そして,続くオブジェクト・ファクトリに関する章では,動的なオブジェクト作成を前提に,いかにして具象クラスに依存しないでオブジェクトを生成し利用するコードを書くかを,具体的なコード例で段階を追って説明している。将来的な具象クラスの追加に耐えられる拡張性のあるシステムを構築する上で,これは極めて有用だ。ただし,この部分を読み進めるには,ある程度のJavaの知識と忍耐力が必用だ。
正直言って,本書の内容はかなりレベルが高く,私の場合,2度3度と読み返さないと著者の意図が理解できない個所がいくつかあった。しかし,それだけの価値のある本だ。多くの人が本書を熟読することで,拡張性と堅牢さを備えたJavaプログラミングをマスターすることを期待する。 (日本アイオナテクノロジーズ主席コンサルタント 小野沢 博文)
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