ハイフェッツが遺した協奏曲録音を5曲精選、それを冒頭のシャコンヌと掉尾を飾るガーシュウィンで挟むという粋な構成。録音は1955年(ブラームス)から70年(シャコンヌ)まで、つまりハイフェッツの円熟期にあたる。ステレオLP登場前後の録音はすべて3チャンネル収録。それらは現在SACDマルチのリマスター盤が単品発売されているが、こちらのステレオミックスCDでも充分に良い音で聴くことができる。個人的にハイフェッツの絶頂期はもう少し前と思うものの、最晩年まで技巧面での衰えを感じさせなかった人だから、これはバランスの良いコンピレーションといえる。
演奏は今聴いてもやはり驚異的。ただしファイフェッツに特有のテンポの速さは曲によって好悪の分かれ目となるところで、チャイコフスキーは爽快感があるもののシベリウスはほとんど過剰と感じる。このあたりは聴き手の好みの問題とはいえ、違和感を覚える人も多いのでは。
ほぼ同時代を生きたオイストラフの演奏が今でも色褪せないのに対し、ハイフェッツに前時代的な印象を受けるのは不思議な気もするが、音楽の普遍性とはそういうものなのかもしれない。やはりハイフェッツの真骨頂は世評通り、小粋な小品で発揮されるのだろう。とはいえ、一世を風靡した天才の技巧と輝きのある音色は、やはり居住まいを正して聴きたくなる。そういう奏者が現代に何人いるだろうか。