「シュリ」に続いて日本でも大きく採り上げられた作品であり、「シュリ」と同じく南北分断国家の悲劇を基本としながら、その語り口ははるかに重いサスペンス・ヒューマンドラマである。エンタテイメント性がないと言えば嘘になる。しかし「シュリ」が南北分断という事実に立脚したアクション&メロドラマだったとしたら、「JSA」は南北分断そのものを描こうとしているように感じられる。書き割りに過ぎない「シュリ」で描かれた北側とその工作員に比べ、「JSA」の軍人は血の流れた個人として描かれており、それがまたこの作品の悲劇性に深みを増している。
韓国系スイス人将校ソフィーを探偵役とした緻密な謎解き・数少ないながらも迫真の戦闘アクションシーン・緩急のついたキレのあるカット割と演出・複数の時間軸で起きた事件を一つの流れとしていく構成、どれをとっても映画の質として「シュリ」を凌駕している。
朝鮮労働党中央委員会組織宣伝扇動担当書記も努めた金正日北朝鮮労働党総書記は映画狂で知られる。総書記は南北首脳会談において、韓国人記者相手に「シュリ」の北朝鮮の描き方には苦言を呈していたが、公開後大きな話題となっていた「JSA」には「是非観てみたい」と興味を示した。また、実際に観て高い評価をしていたといわれる。
派手なわけでは決してない。しかし地球上残された最後の壁の一つを正面から描いたものとして、この映画は重い存在感を保っている。