もちろん、現役の監督でありますから総括するのは早いとは思うのですが彼のベストは何かと考えるとやはり本作「JAWS」に尽きるというのが率直な感想。
その理由は恐らく彼の作品の中で唯一「役者の力量に頼る部分と演出」が絶妙に調和しているから。
元々ベストセラーの映画化であったわけですが「人食いザメの出現によってニューイングランドの小さな町がパニックに陥る」という内容自体は映画となれば本来「色物」以外の何物でもない。
しかしスピルバーグは「面白ければそれでいい」と言うアプローチをストレートに選択、そのてらいの無さ(=大胆さ)に観客は喝采を送ったのだ。
若さを感じさせる躍動感のある演出に胸躍りました(正にこう言うのが見たかったという感じ)。
ただ、この流れにおいては演技者にはもはや一要素として以上のカリスマ性など要求されないことになります。
したがってスピルバーグの作品においては主役は常に物語(演出)であり、役者に要求されるモノは決して大きくはない。
スピルバーグ自身も恐らく役者の魅力を引き出すことなど歯牙にもかけていないのではないでしょうか?
その辺りが「役者の魅力も映画の一部」として演出に組み込むこことを厭わなかった「娯楽映画の父」ヒッチコックとの違いですかね。
スピルバーグ作品の出演者が役者として押しなべてひどく印象が薄くなるのは(特に女性・ロマンスの描き方はお世辞にもうまいとは言えない)
研究のテーマにでもなりそうですが唯一の例外と言えるのがやはりこの「JAWS」だと思います。
ロイ・シャイダー、リチャード・ドレイファスそしてロバート・ショー。
三者三様の人物造形は単に後半、海上でのサスペンスシーン迄の繋ぎとしてではなく「人間ドラマ」としてきっちりと機能しており、観客は彼らの行動・運命から目が離せなくなってしまうこと請け合いです。
何よりこの部分がドラマとして非常に良く出来ています。
本作の主人公は警察署長だが彼と海洋学者は共に事態の収拾を図るべく共闘している。その点で無頼な船長に対しては不信感も抱えている訳です。
しかし一方で、海洋学者と船長の間には共に「海で生きる者」としての共感も存在しており、その点では逆に署長が疎外されているのだ。
結果として主人公である署長とORCA号の主である船長の間には常に緊張感が漂っており、それが巨大ザメとの運命的な死闘のお膳立てとして見事に機能しているのだ。
この見事なドラマがあるからこそ本作は今見ても十分に面白く、語り継がれてゆく「伝説」となっているのだ。
もしかしたら世代によっては本作を見たことないという方もいらっしゃるかもしれませんね。
未見なら絶対に見ておくべき作品ですよ。