1位 フラワー・トラヴェリン・バンド 「SATORI」
2位 スピード・グルー&シンキ 「イヴ 前夜」
3位 裸のラリーズ 「HEAVIER THAN A DEATH IN THE FAMILY」
4位 ファー・イースト・ファミリー・バンド「多元宇宙への旅」
5位 J.A.シーザー 「国境巡礼歌」
本書巻末の「著者のトップ50」に掲げられた上位のアルバムを見ただけでも、ジュリアン・コープが日本のどのようなロックに関心を抱き、評価しているのかがわかると思います。
本書では、日本の1960年代から1970年代後半にかけてのアンダーグラウンド・ロック・シーンが体系的に説き明かされています。
日本の音楽誌が重きを置きたがるはっぴいえんどやYMO等には全くといっていいほど言及がなく、内外のサイケ・プログレ系リスナーに人気の高いフラワー・トラヴェリン・バンドや裸のラリーズ、J.A.シーザー、マジカル・パワー・マコといったミュージシャンの解説に多くの熱意が注がれています。
音楽性についての評価にも日本の音楽誌のような遠慮がなく、良し悪しの基準がはっきりしています。例えば村八分に対しては終始(極めて)否定的なトーンですし、一方で外道については、彼が当初村八分に期待していたサウンドを持っていたと持ち上げています。あえて名前を挙げませんが、コレクターマーケットで高値がつくいくつかのミュージシャンのアルバムを「クズ」とこき下ろしてもいます。
ただ、スタンスが明快なことから、読み手が著者との音楽的嗜好の距離感を測りやすく、否定的な評価があっても不愉快な感じは受けません。むしろ痛快に感じる部分が多いです。
原書を読んだ時点で気になってはいましたが、事実関係の誤認は非常に多いです。日本版では明らかに誤っている箇所については注記が付されているほか、こうした疑問点に関しての折田育造氏(日本音楽業界の重鎮)へのインタビューが加えられています。折田氏は原書に対しかなり辛口の意見を述べられています。また近田春夫氏とマーティ・フリードマン氏の対談も加えられており、面白い読み物になっています。
日本版は日本の音楽事情に通じた編集部の監修による丁寧な造りですが、原書にあった索引は残してほしかったと思います。
結論めいたことをいいますと、とてつもない労作だということです。日本にはこれまで類書は皆無といっていい状況でした。言葉の壁もあり、資料を掘り起こすのもとてつもなく困難な作業だったと思います。またこうした日本のロックの海外への紹介は本来日本の音楽評論家が果たすべき役割であったはずです。その意味でも本書には批判より賞賛が向けられてしかるべきかと思います。海外で今後本書が日本のロックについての基本的な解説書になるであろうということには、一抹の不安を覚えないでもないですが。