ジャズのレーベルからの発売にことさら意味を求める必要はないと思うが、確かにこれは今までのクラシックの常識とはいい意味で違った場所にある音楽かも知れない。音が非常にナチュラルで、眼前で聴いているような空気感がある。弓の動きまで手にとるようだ。これこそジャズレーベルならではの得意技と言えようか。
ナチュラルだと言ったが、バッハの格式にこだわる人には「ジャズ」に聴こえたりもするのだろうか。バッハ聴きは保守的だ。だが、そろそろバッハを解放してあげてもいいのではないか。バッハが何をどう作ったかは重要だが、もっと重要なのは演奏がいい音楽になっているかどうかだ。ブルネロの演奏もそう言っているように聴こえる。とは言え、さほど常識破壊的なことをやっているわけではない。
ブルネロの音はだから、仰々しい構えやハッタリとは無縁だ。いい意味で重厚感がない。しかし艶やかな音色が変幻自在に変化する様には心を揺り動かされる。これこそ、自然から啓示を受けるブルネロの本領なのか。まさに自然の中で微笑みかける優しいバッハの姿が心を満たす。教条に縛られたつまらない演奏とは雲泥の差がある。