入門書としてコンパクトで読みやすく、優れた本だと思います。
2010年に
『バッハ=魂のエヴァンゲリスト』 が加筆の上文庫化されたので、より専門的に著者のバッハ論を読みたい方は、値もあまり変わらないので、そちらの方がよいでしょう。
「数と象徴」のように、やや中途半端でその割に専門的すぎる章もあるのですが、バッハの時代を超えた側面、より小さい方向に細密に凝縮していく方向性など、バッハの音楽の本質をよくとらえています。
私は10数年前に読みましたが、バッハをオリジナル楽器(古楽器)で演奏する理由について、この本を読むことで非常に納得し、以降オリジナル楽器演奏の素晴らしさに目覚めました。以下引用します。
「バッハが二〇世紀に生まれたなら、もちろん彼は、いくつものキイで身を固めた、銀や金のフルートを使っただろう。だがそれならバッハは、彼のフルート・ソナタを、あのようには書かなかったはずである。バッハが見たこともなく、想像すらつかなかった楽器でバッハを演奏することが、本当にバッハの音楽にふさわしいのかどうか。」
一方で旧来の演奏でも、リヒターやグールドのように時代を超えて優れた演奏があることにも同意です。
ただし、巻末のおすすめ曲は、曲目にはだいたい同意ですが、おすすめの演奏は、刊行が1990年のためすでに古くなっています。
また、もともと取り上げ方に少し偏りもあるように思われます。
ヘレヴェッヘ、クイケン兄弟、ガーディナーなどもあまり重視されていません。
一方でかなりマイナーな演奏で、今日廃盤になっているようなものも取り上げられています。
ここのお勧めにとらわれず、よい演奏を探してみた方がよいでしょう。
例えば入門用としては、
ベスト・バッハ100 なども、見かけによらず、なかなかの内容です。