すごい。何がすごいって、1ページたりともつまらないページがないのがすごい。一度たりとも読者を白けさせないのがすごい。読み終わった後の感動の度合いがほんとにすごい。
同性愛物、特に男同士のそれって、もうだいぶ描き尽された感じがありませんでしたか?読んでいて「ちょっと物足りないなあ」とか「特に目新しくないなあ」って思ったことありませんか?私だけですか?もしも同じように思っていた方がいたら、あなた、これはいいですよ。ギナジウム、そして同性愛という、王道を通り越してありきたりになってしまいそうな題材なのに、いやいや、全然そんなことはない。ディテールが素晴らしいとか、主人公から脇役に至るまで人物を描ききっているとか、そんなつまんないことは言いませんけど(言ってますけど)、もう絶対に、あなたのお気に入りの本ベストテンのトップを飾るに違いありませんよ。
男と生まれたけれど心は女であるJは、色々と(もうほんと、時には見てられないくらい色々と)つらい目にあって、極限まで追いつめられる。そんな彼にポールが言う「僕は君が好きだ。それだけじゃ二人で生きてく理由にならないのか」。誰でも思いつけそうな、しかし中村女史にしか生み出せない台詞です。読み終わったときの感動と、読み終わってしまったというさびしさは、えも言われない。彼女の紡ぐ物語に、ハズレはありません。多分これからもないでしょう。この人は「描く」ということについて、すでにゆるぎない基盤を確立しているんだと思います。