コントラバスのアルコ(弓弾き)により静かに始まるFormentera Ladyでは、ピート・シンフィールドが見た、地中海のけだるい夏の午後の風景が目に浮かぶ。抑制されたフリップのアコースティックギター、奔放なメル・コリンズのサックスソロが延々と続く。
一転、2曲目のSailor's Taleでは、ドラム、サックス、ギターが暴れまくる。前半のサックスソロも凄いが、聞き所はフリップが歪んだ音色のコードをかき鳴らす唯一無二のギターソロだ。やがて、サックスとメロトロンの音の洪水に巻き込まれ、最高潮に達すると、すべてを絶望の底に突き落とすようなフリップのコード奏法が再び現れ、嵐は収まり静寂が訪れる。
3曲目のLettersは、夫の不倫相手と妻の手紙のやりとりを描いた曲で、シンフィールドの世界がダイナミックな演奏により完璧に表現されている。サックスソロが素晴らしい。
4曲目のLadies of the Roadは、一般にビートルズ風と言われている、King Crimsonのシニカルなポップナンバー。後にBook of Saturdayで開花するフリップの逆回転サウンドが生かされている。この曲でもメル・コリンズのサックスソロが素晴らしい。残念ながら、メル・コリンズの活躍はここまで。
Prelude: Song of the Gullsは、その名の通りタイトルチューンの前奏曲。オーボエの音色が哀愁を誘う。晩夏の夕方の砂浜が似合う曲。
ラストを飾るIslandsは、キース・ティペットのピアノに導かれて厳かに始まる。ここでの演奏は、アヴァンギャルドなものではなく、ひたすら美しい。ボズの語りかけるような声により、少しもの悲しい、愛と平和を希求する詩が歌われる。マーク・チャリグのコルネットのソロが最初は静かに、次第に力強く響く。すべてはメロトロンとハーモニウムに包まれ、フリップとシンフィールドの最後のコラボレーションが静かに幕を下ろす。その時、聴く者は圧倒的な感動に包まれることだろう。