Kenny Wernerと凄腕ビッグバンド集団Brussels Jazz Orchestraの共演盤。書き下ろされた3楽章構成の組曲「Cantabile」
に加え、過去Wernerが作曲した初めてのビッグ・バンド用楽曲「Compensation」等4曲を加えた全7曲収録。
ビッグ・バンドの演奏と各ソリストの演奏が交互に流れる構成だが、変幻自在に音色を変えるビッグ・バンドの卓越したホー
ン演奏、各ソリスト達の名演、そしてそれらを輝かせる楽曲…と全てに於いて見事な出来。以下7曲の概略と印象を記す。
「Cantabile: First Movement」…冒頭のキャッチーなホーン隊の旋律で早速心を掴まれる。各ソリストの演奏がリレー形式
で流れる。特にPeter Hertmansのエレキ・ソロには意表を突かれるが、これがビッグバンド色に意外な程嵌り実に格好良い。
「Cantabile: Second Movement」…前曲とは一転抑え気味で陰影を帯びたホーンの上、きらきら瞬くピアノ・トランペットの音
が自由に舞う極上のバラード。敷かれた複雑なコード進行が絶妙な美しさを造る。
「Cantabile: Third Movement」…高速のテンポに乗せ緊迫したコードを鳴らすホーン隊とピアノ・トランペットの強烈なドライ
ヴと一体感が興奮を呼ぶ、特に終盤への猛烈な突進ぶりと大団円振りは作品中のハイライトの一つ。
「Second Love Song」…Kennyが影響を受けたというBob Brookmeyer「First Love Song」へのオマージュ。ホーン隊の物
思いに吹ける様にぼやけた優しい音色が染みる。中盤に挟まれるピアノとトロンボーンによる甘い二重奏が聴き処。
「The House of the Rising Sun」…有名な伝承歌を、躍動するドラムとホーンによる高速のメロディといった硬質なアレンジ
に仕立てたユニークな解釈。畳み掛けるように複雑な動きをするリズムと終始忙しなく活躍するドラムから耳が離せない。
「Compensation」…前曲で火照った心を一旦落ち着けるかのようなKennyのピアノ・ソロで幕を開ける。2分位から突如入り
込むホーン・セクションで一気に盛り上がる。跳ねるビートにピアノ・ホーンが呼応するスイング感が楽しい。
「Institute of Higher Learning」…MITウインドアンサンブルによる委託にて作曲された一篇。ホーンによる荘厳な雰囲気で始
まり、中盤にトリオ構成等を挟み展開。徐々に緊迫感と熱さを増し加速するピアノとホーン隊との掛け合いが聴かせる。
本盤にはビッグ・バンドによるあらゆる表現の試みと聴く楽しみ、さらには演奏する側の喜びまでもが詰まっていると感じた。
ビッグ・バンド好きは無論、縁の薄い人が聴いても十分耳を捉えるポピュラー性を備えていると思う、傑作。