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「ノスタルジア」のフィルムメーキング作品を見たことがある。彼の死後まとめられたやつだ。そこに出てくるタルコフスキー映画の仕掛け(人工の霧や、ミニチュアの家、水たまり、犬 などなど…)にボクは心を奪われた。
ハリウッド的な馬鹿げたCG合成の対極にある手仕事の積み重ねが、ただの水たまりを聖なる泉に変えるのだ。
ああ、こうやって撮っていたのか! やはり、こんなにも手間暇かけて! ひとつひとつ作り上げていったのだと。
そして、その原型は、彼の作り出す映像の前に、こうやって彼の目の前に、現実の風景として存在していたのだ。
このような風景を見ることのできる人間は、やはり神を信じるのか。
ボクはただ羨望の眼でページをめくる。
メーキングフィルムの最後のシーンで、「ノスタルジア」ではカットされていた部分が現れた。茂みを分けていくと川が望まれる。主役のヤンコフスキーが遠くからこちらを振り返る。
この本の最初のポラロイドは、茂みの先の川とボート、川面に写る対岸の木。
そこには、次の文が添えられている。
The image is not a certain meaning,
expressed by the director,
but the entire world
reflected as in a drop of water.
そう、一つの水滴に全世界は映し出される。
タルコフスキーにとってそれこそ、神の存在証明なのだ。