60歳の誕生日を迎えたジョビンが、自分の希望どおりにスタッフも曲も選び、思うがままに作り上げた記念の2枚組アルバム。もともとは非売品で、彼の死後になって発売されたそうです。結局彼が選んだのは、80年代から晩年にかけて共に過ごしたバンダ・ノヴァであり、妻や娘もヴォーカルで参加して、文字どおり寛いだファミリーアルバムとなっています。何の気負いもてらいもなく、過ぎ来し方を淡く思いつつ、微笑を浮かべるジョビンのあたたかな気配がありありと漂います。選曲もジョビン・ナンバーの集大成。(ただ、どうして「おいしい水」は漏れたのでしょう。ちょっと知りたい、かな。)ジョアン・ジルベルトが老いてなお音楽の求道者であり、聴くもののいずまいを正させるような張り詰めた何かを持っているとすれば、ジョビンの晩年の音楽はボサノヴァでありながらブラジルを遥かに超え、地球や人間への愛に満ち、すべてを穏やかに受け入れる、東洋的にいえば桃源郷の音楽とも言えそうです。難しいことはもういわないで、ただこの音楽に浸っていたい。柔らかな光がみえてきます。