2002年、彼らとDFAによる「House Of Jealous Lovers 」が音楽シーンに与えた影響には
とんでもないものがあった。
パンキッシュなエナジーを持った生バンドがハウスミュージックを演奏するというアイデアは、
のちに拡大再生産され様々なバンドを生んだ。
今でも活躍するバンドで、彼らが居なければ生まれてもいなかったであろうバンドは結構居るように思う。
(それこそニューエキセントリックと呼ばれたバンドの中にも彼らのアイデアは受け継がれている)
のちにここ日本で起きる、バンドの4つ打ちブームの遠い影響源という悪しき部分もあるが
それでも、ここ最近の音楽シーンにも通ずる地殻変動を促す最初の大きな一撃だったのは間違いない。
なので、このアルバムを楽しみに待っていたが、最初に通して聴いた印象は非常に地味だと感じた。
音色や音数の少なさ、メロディーのシンプルさがそういった印象に繋がったのだろうと思う。
あと彼らが不在の5年の間に、彼らのアイデアは他のバンドに再生産され尽くされて
アイデア自体の新鮮さが失なわれていったのも大きいかもしれない。
そういった意味で、このアルバムに目新しさは無いし、特別に驚くアイデアがあるわけでもない。
だけど、ラプチャーを1stから聴いている人にとっては、
そんなの知った事ではないと思わせるだけの力がある良いアルバムになっていると思う。
相変わらずVoはファルセットを行き来するし、べースラインはグルーヴィーだし
ギターは針金のようにキンキンと尖ってて、ドラムはバタバタと忙しそうにしている。
そういった1stの頃から変わらないラプチャーサウンドがこのアルバムでは鳴っていて
やはり、そこには惹かれてしまうものがある。
アルバムはU2のような開放的でスケール感のある「Sail Away」で幕を開ける。
続く「Miss You」は、2ndに入っていたようなダーティーな雰囲気のある縦に跳ねるビートを持った
昔のソウルっぽいR&Rチューン。単音のシンセに良い意味でのチープさがあって良い。
3曲目の「Blue Bird」のイントロでは、フレンドリーファイヤーズを思わせる
多幸感溢れるコーラスワークが聴けるが、曲全体もユーフォリックなサイケデリアに包まれていて
なかなか面白い。
「Come Back To Me」は、東欧の童謡を思わせるメロディーを持った4つ打ちのダンスチューンで
後半うす汚れたエレクトロっぽいアレンジになると、がらっと曲の雰囲気が変わる。
(このがらっと後半エレクトロニックに変わるアイデアは「Sail Away」でも使われていて
こちらでは管楽器が入って、フリーキーなエレクトロニック・ジャムが展開される)
個人的には、続く「In The Grace of Your Love」と先行公開されていた「How Deep Is Your Love」
2曲のハウスチューンが、今作のハイライト。
どちらも微妙に遅いBPMの曲で、粘っこくてソウルフルだし、ファルセットがセクシーでとても格好いい。
他にも「Roller Coaster」が分かりやすいけど、彼らのイーノ/ボウイフリークぶりが
相変わらず隠し味的に聴けたりする一方で
「Children」のような、ギターの低音を削り、高音をキラキラさせて
光に包まれたような多幸感を味わえる、わかり易くキャッチーな曲もある。
クロージングトラックの「It Takes Time To Be A Man」も、エンディングロールとしては完璧。
この曲はピアノが涼しげな雰囲気のR&Bで、ベースラインも非常にシンプルでリラックスしており
聴いていると、プールか浜辺のビーチパラソルの下で、デッキチェアに寝そべっているような気分にさせてくれる。
レイドバックした非常に良いアルバムの終わり方だと思う。
あと、ジャケットのキリストがサーフィンをしているようなイメージの写真もユーモラスで良い。