それがどうして「未収録」だったのかについて明らかではないが、このCDはEva Cassidyの未収録トラックを集めたものだ。偶然かもしれないがスローテンポの楽曲ばかりなので通して聴くとやや平板な印象があり、アルバムとしての評価は星四つ。でも、Evaのファンなら、これを手に入れないわけにはいかない。
ギターの弾き語りがなんともフォークな"It doesn't matter any more"(Paul Anka)、Evaの清澄な声がどこまでも伸びていく"Fever"、John Lennonの唄とは明らかに違う説得力を持つ"Imagine"、奥行きのある歌唱を聴かせてくれる"Tennessee Waltz"など、Eva Cassidy独自の解釈力と歌唱力がこのアルバム収録曲でも充分に発揮されている。Evaの唄は、原曲とはまったく違う方向にむかって彼女独自の世界をかたちづくる。それは、「カバー曲」というどこか媚びた呼び方をしてしまうにはあまりにも表現力が豊かな世界であり、それは「唄ひ手冥利~其の壱~」で椎名林檎がかいま見せたものと同じ種類の才能によってのみ現実のものになる。あくまでも「室内」にとどまろうとする林檎の唄に対して、Evaの唄に共通するものは地平線まで見渡せそうな「屋外」の空気感だ。