桐野の近作の傾向からして、ある程度みなさんにも予想が付くと思う。中年から初老にかけての複数の女性の、一人称で語られるアングラ人生。人生にまつわる小ずるい部分、汚い部分がこれでもかと描かれる。
しかしこの小説はなんなのだろう。重要かと思われた登場人物があっけなく死んで主人公が交替したり、都合の良い偶然があるかと思っても、その条件をいきあたりばったりな行動によってぶっこわしてみたり…。
性格の破綻している登場人物の一人称意識で語られるので、場面描写も乱暴だ。いわゆるメタ小説・破綻小説ともとれるが…。確かに精神の極北を描くことに成功してはいるが、私たち読者を突き放しすぎではないだろうか。泣けるはずの部分で泣けないし、ハラハラするはずの部分でも淡々と読めてしまう。登場人物が、「笑うのも死ぬのもアタシ、あんたたちは他人」とばかり、読者を突き放している書きぶりなのだ。
オーソドックスに人物を描き込んだり、場面描写を重ねて心情を描ききる才を持つ作家だけに、なんだかとっても…惜しい。