Slyの約30年ぶりの新作、"I'm Back! Family & Friends"。
2006年グラミー賞での奇跡的な復活劇から、その後精力的にライブ活動を行い、こうして作品を創り上げるまで復活したのかと思うとファンとしては感慨深い想いはあるのだが、その新作に胸が躍るような気持ちや期待感など一切沸いてこないというのも事実。
しかも皮肉にも新作のタイトルが"バック"と来れば、何故か意図的に期待はしないでくれと言っているような気もしてくる。
アルバムの内容は、Jeff Beck、Ray Manzarek、Ann Wilson、Carmine Appice、Johnny Winter、Bootsy Collinsといったゲストを加え、過去の音源に手を加えた内容がメイン。
特に真新しさもなければ、Sly独特の音源に張り巡らされた緊張感も消え、逆にゲストが入る事で音も統一感がなくなり、なんとも散漫な感じになってしまった気もする。
Sly Stoneもところどころ歌いなおしをしているけれど、60年代〜70年代の絶好調の時代の声に、今のか細い弱々しい声が勝るはずもない。
だが、少し嬉しかった事もあり、それは新曲が3曲収録されていると言う事。
"Plain Jane"と"His Eye Is On The Sparrow"、"Get Away"。
ゴスペルのスタンダードナンバー"His Eye Is On The Sparrow"は少しイマイチな内容ではあるものの、"Plain Jane"は野太いベースラインがとっても心地良いファンクナンバー。
そして、個人的に好みなのが"Get Away"。
疾走感漂うリズムと、その上に広がるルーズでアンニュイな雰囲気は非常に彼らしくて良いなと思った。
確かにそれでも物足りないのだけれど、このアルバムがただ過去の名曲を友達と一緒に楽しくやろうというものではなく、新しいものを生み出そうという心を持って制作に取り組んでいると言う事が解っただけでよい。
Sly Stoneは間違いなく他に類を見ないほどの天才だった。
その才能を持って一気に時代の寵児へと上り詰めたが、重度の麻薬依存で一気に転落。
度重なる"バック"も過去の輝きを取り戻す事なく終わった。
Slyを楽しみたいという人はこのアルバムではなく、過去の音源"Stand"、"There's a Riot Goin' On"、"Fresh"といった素晴らしい音源を聴いて欲しい。
あくまで、この作品は彼の事を愛して止まないファンの為のものであり、それ以外の価値はあまりない。