『ラビリンス』よりも幅広く受け容れられそうなアルバム。『ラビリンス』は、全編リュート弾き語りのダウランド作品集で、しかも歌とほぼ交互に手紙の朗読が入っていて、もともとダウランドに関心のある私でも正直最後まで聴きとおすのはなかなか辛かった。(せめて朗読が3つか4つならよかったのだが…。)
それに比べると、「冬」がテーマの今作は、全体としてはトラッド系の雰囲気が強めだが、彼らしいサウンドも聴けて、従来のファンにもあまり違和感なく受け容れられるだろう。1曲目を聴いた限りでは前作の延長と思うかもしれないが、2曲目で驚かされる。これはピーター,ポール&マリーの「ア・ソーリン」だ!(本当に同じ歌で、作詞作曲のクレジットにポール・ストゥーキーの名もある。)あの名曲がいかにもスティング風の歌に衣替えしていて、これはこれでとても魅力的だ。ただ、もとは古くからあるハロウィン関連の歌とはいえ、彼自身の解説にPPMへの言及が一切ないのと、 この曲で自分は「善き者よ、神が汝らを安んぜんことを」(“God Rest Ye Merry Gentlemen”) というクリスマス・ソングを取り入れたと言いながら実際にはPPMが既に「ア・ソーリン」でその歌を取り入れていたことに触れていないのは、少々納得いかない気がする。(その分星一つ減点。)
その他、彼のリュートが聴ける3曲目、小説『宝島』などで知られるR.L.スティーヴンソンの詩に曲をつけた格好よい5曲目、今年生誕350年とされるイギリスの作曲家パーセルの曲にイギリスの有名な詩人ドライデンの詩という組み合わせの7曲目、スティング・オリジナルの10曲目、シューベルト作の14曲目、バッハの曲にスティングが詞をつけた15曲目など、いろいろと興味深い。なお、日本盤はさらに2曲のボーナス付きのうえSHM−CD(限定盤)なので、どうせならそちらがおすすめ(その分そちらより一つ減点)。DVDはメイキングとスティング自身による解説。