本書は、IT革命の本質を著者なりの視点から見つめ直し、IT革命によって大きく変化していくであろう社会において、今後どんなことが生じる可能性があり、それに対して、どういった対応策をとるべきかを提示する書である。
こうした問題意識については、既にあらゆるところで議論されてきたが、著者はこうした議論は、そのほとんどが短期的な視点に止まるものであり、IT革命の本質を突いた長期的な視点にたった議論を展開できていない、という。
本書は、これまでのIT革命の議論の問題点を指摘し、現在生じているIT革命の現実を紹介している。それらを議論した後、本書の主張が展開されるのだが、その内容は次の点である。第1に、そもそも人間は共同体なくしては生きられないという前提にたち、IT革命による、これまで工業社会を支えてきたメディアの変革によって、工業社会で形成された共同体とは異なる新たな共同体ができ、その共同体がもつ社会的な意識・欲望・価値観がこれまでの生産や消費のありさまとは異なった市場経済一偏等だった社会から、贈与・互酬経済のウェイトも高めるような社会へ変化していく、ということである。そこでは、生産者と消費者の間で形成される体験・サービスに対して対価が支払われ、消費者一人一人に対する思いやりなどを通じて贈与・互酬行為が形成されていく、ということである。
第2に、IT革命の進展は、あらゆる「モノ」がもつ、物的側面と情報的側面を急激に分化させる力を持ち、かつその情報的側面を急激に革新させ、その両側面のギャップを作り出す。こうしたギャップ問題を解決するためには、物的側面の革新を急ぐ必要があるという問題意識のもと、情報都市社会という概念を提示する。その社会とは、まるで映画でみる近未来都市を想像させる。都市に高層ビルを乱立させ、空中都市を構想すること、そのビル同士を、地面を歩いてわたるのではなく、空中でつないで渡り歩くような世界であり、こうすることによって、発達した情報側面に物的側面が追いつける、という。
このように、著者の発想はかなり壮大な構図となって表れているが、どのような形であれ、本書で指摘された上記2点は、IT革命を考察する上で重要かつ本質的な、長期にわたって考察せねばならない問題であろう。