畑村洋太郎氏の「失敗学のすすめ」以来、失敗学ばやりである。
システム開発の「失敗学」本もかなり増えてきたので、この機会に一通り目を通しておこうと手に取ったなかの一冊である。
本書は、日経コンピュータ連載記事「不条理なコンピュータ」の再編集モノだ。失敗「学」の「研究」、というタイトルは少しヘンだが、内容はシステム開発の失敗事例31件をドキュメント風に記述したものである。
失敗学といえば、事例から失敗にいたる共通的構造を分析し、なにがしかの法則や「べし・べからず」の教訓を引き出すことに主眼をおくのが普通だ。しかし本書のはそうではなく、ひたすら失敗事例を並べていく。
また、本書で扱う失敗事例が、技術やマネジメントの問題ではなく、ステークホルダーのわがままや欲に起因する問題ばかりである点も興味深い。
まっとうなSEやPMが、頑張ってなんとか良いシステムを作ろうとする。しかし、ありとあらゆるステークホルダーが勝手な言動でそれを「妨害」する。物語としては、SEやPMが主人公、周囲のステークホルダーが「不条理な」悪者、という形をとってはいる。しかしよく読んでみると、初めから失敗をたくらんでいる悪者などはどこにもいない。成功させたいという思いは皆同じだ。なのにプロジェクトは失敗する。プラスを足していくといつの間にかマイナスになる。まさに不条理である。
本書には結論もないし、成功のためのノウハウもない。難しい理屈もなく内容も軽めだ。が、その軽さに比して得られるものは意外に深い。読む人の置かれた立場や経験、見識によって本書はいろいろな顔をみせるはずだ。その意味で本書はシステム開発者自身を映し出す「鏡」なのかもしれない。そこが本書のいちばんおもしろいところである。
ともあれ、単なる読み物としても肩が凝らず楽しめる。一読をお勧めしたい。