Jonah Lehrer のHow We Decideは、emotional brain(感情を司る脳の部位とそれによる決断)と rational brain(合理性を司る脳の部位とそれによる決断)のバランスの重要性を説いている。第一印象の直感的な理解力の重要性を説いたマルコム・グラッドウェルの「Blink」とよく比較されるのは、テーマが似ているだけでなく、紹介する逸話や実験の選択も類似しているからだろう。読者を引き込む面白いエピソードや実験で決して飽きさせないところも共通している。
だが、最大の差は、グラッドウェルがジャーナリストであるのに対し、レーラーがノーベル賞受賞者のラボに勤務したことがある神経学者だということだろう。疾患のせいで感情を失い完全に合理的になった患者がかえって決断力を完全に失ってしまうというエピソードなど、神経学者だからこそ着眼し解説できる逸話がレーラーの強みだ。
「Blink」でグラッドウェルが使った「thin-slicing」の説明に物足りなさを感じた者としては、脳のメカニズムを説明し、「いかに判断を下すべきか」というところまで言及しているHow We Decideのほうに読み応えを感じた。
語りの達者さではグラッドウェルの「Blink」、内容の濃さでは「How We Decide」、というのが私の感想だが、どちらも面白いので読み比べてみるといいだろう。