音から芳香が漂うかのような、深みのある歌と演奏。一通り聴いた後は幸福感で胸が一杯になった。
細野晴臣のソロ名義新作は、自作曲とカヴァーをほぼ半々とした構成だが、中身の音楽は勿論、外側ののパッケージ・デ
ザインも含めたトータルとしても優れた作品である。
まず音楽そのものの充実に触れたい。7曲が細野氏自身のオリジナル、5曲がカヴァーという構成。全体を通し淡々とした
風情の中に艶を感じさせる細野氏の歌を軸とし、高水準の生バンド演奏に負けない存在感と貫録を醸し出す。
12曲中5曲を占めるカヴァーは、Chaplinの名曲「Smile」からジャズ・ブルースの神Hoagy Carmichaelの「Lazy Bones」ま
で迂闊に手を出したら返り討ちにあいそうな曲者揃いだが、見事に細野晴臣の曲として消化され借り物感を感じさせない。
自作曲も力作揃いだが、「Rosemary,Teatree」で魅せる、ボサ・ノヴァの精神である郷愁と冷笑感を見事に表現したことば
と歌、匂い立つようなギター演奏は作品の白眉だろう。Coccoの入れる「チントンテン」という合いの手が南国風情を運ぶ「
バナナ追分」も楽しい。
また本作、音の鮮度が非常に高い。イヤフォン経由で聴いてもギターの艶やかな音色・細野氏の低音部における声の深
み等拾っているのだから、しっかりとしたオーディオで聴けばどれ程良い音がするのだろう。一つの音も聴き逃すまいとい
う気持ちにさせられる。
また本体CDに劣らず、ブックレットも充実している。聴き手が馴染みの薄いカヴァー曲元の情報も含め、各曲の歌詞と並べ
細野氏の詳細な解説が付いており、各楽曲を身近に感じとれる。その他雰囲気ある写真をあしらったデザイン、細野氏の
本作制作〜完成までの心境が端的に表現される頁下のコメント集等、聴き手にお金を払わせる商品として、この位力の入
ったパッケージを施すべき、というお手本の様な創りとなっている。
外観も含め、実に丁寧に編まれた作品。レビューでは賛否あるようだが私はとても好きだ。