Ambrose Akinmusire(アンブローズ・アーキンムシーレ)は米カリフォルニアはオークランド出身、現在29歳のトランペッ
ター。ハイスクール在学中から演奏活動を開始、Joe HendersonやSteve Colemanらに認められ、Aaron Parks、Vijay Iy
erといった先鋭陣の作品に参加。28歳で若手ジャズ・ミュージシャンの登竜門セロニアス・コンペティションで優勝。
本作は彼名義の2作目。共同プロデュースをピアニストJason Moranが担当(2曲で共演)、ブックレットの写真を観れば分
かるが、バンドメンバーもAkinmusireとほぼ同世代と思われる若手で構成される。全13曲中11曲がAkinmusireの自作曲。
従来の曲者揃いの共演者陣から、聴く前はもっとアクの強い難解な音楽を予想していたが、蓋をあけると予想以上に聴き
易い作品。彼自身の性格からか若干思慮深く知的な雰囲気が漂う音楽になっている。
冒頭悲しくも力強いバラード「Confessions To My Unborn Daughter」にて彼の個性が明確に示される。あらゆる音域を急
上昇したり下降したりと、決して落ちつくことの無いうねうねとした不思議な旋律。独特の節回しに当初は困惑するが、確実
にその美しさに惹かれていった。
警官に射殺されたオークランドの一男性を描いた「My Name Is Oscar」では、終始叩きだされるJustin Brownによるドラミ
ングにAkinmusireの淡々とした朗読が重なる。その響きからはヒップホップの影響も感じられ、雑多なジャンルを抜けて来
た若い世代ならではの感性を感じさせる処は、彼のかつての共演者達の作品にも共通する。
挿入された唯一のスタンダード「What's New」にて軽くスイングする中繰り出されるトランペットの美しさも聴き逃せない。
特筆すべきは音楽の中で中心的ポジションを占める、トランペットとピアノの存在感。自身のナイーヴな心情を吐露するか
の様なAkinmusireの乾いたトランペットと、品の良い香りが漂う様な潤いあるGerald Claytonのピアノは抜群の相性で、
作品全体に漂う内省的なトーンを決定している。特にClaytonのピアノが随所で奏でる余りに美しいフレーズには鳥肌が立
つこと必至。僅か1分強の「Ayneh (Cora)」ではAkinmusireが楽器をチェレスタに持ち替えClaytonのピアノと静かな二重奏
を奏でるが、これが絶品なので是非聴いて頂きたい。私的にはジャンル問わず今年のベストに入る傑作だと思う。
Ambrose Akinmusire(tr)/Gerald Clayton(p)/Harish Raghavan(b)/Walter Smieh 3(ts)/Justin Brown(ds)/Jason Moran(rhodes)