西洋音楽の影響を受けたハワイアンも良いけれど、やはりそれ以前のフラ・カヒコの素晴らしさには敵わない、そう再確認させてくれるCD。
トム・ヒオナをはじめとして、伝説的クムフラ(ハワイ文化を教える伝承者)たちが集まり、スミソニアン財団のために行った貴重なレコーディングのようです。
様々なメレ(詠唱)のスタイルが収録されています。1923年から1989年の録音であり、遙か昔のメレのスタイルを知ることができました。
メレを中心にイプ(ひょうたん)、パフ(鮫の皮を張った太鼓)などの演奏が聴けます。
曲によっては録音状態が悪く、打楽器の演奏がまるで初期のヒップ・ホップのように聞こえます。アメリカの黒人達がかつて12ビットのサンプラーでソウルなどのアナログ盤からサンプリングして作ったダーティーでリアルな質感に酷似。
かつてのヒップ・ホップはコンクリート・ジャングルで暮らす貧しい黒人たちのリアルな民族音楽でした。現在は商業に取り込まれてしまい、水で薄めた安っぽいサウンドに変わってしまいました。かつてのプリンスのように実験的なサウンドと商業を両立させてりる人たちもまだ多くいますが。
脱線しましたが、メレもまるでラップのように聞こえます。地に足の付いた本物の音楽だけが持つ、匂いや温度が感じられます。
ただ単に本物というだけでなく、特に21. Au'a 'ia e kama e kono mokuの演奏は最新のNYスタイルと言われても信じてしまう程斬新な音像です。TVから流れてくる流行歌に隠れて、世界中にはまだまだこのように革新的で、手で掴める程の存在感を持った音楽が眠っているのかと思うと、自分の不勉強ぶりを反省するしかありません。
アメリカの黒人達は、「歌」からメロディーを捨てて、リズムと音色(声色)に重点を置き、声を打楽器的に使うことでアフリカを取り戻しました。ラップという歌い方です。
ラップを音楽ジャンルと勘違いしている人も多いですが、ラップを多用する音楽はヒップ・ホップです。厳密に言えば、ヒップ・ホップという言葉もラップ、音楽、DJ、グラフィティ、ブレイク・ダンス、ファッション、スラング等のストリート文化の総称ですが。
再び脱線しましたが、メレはハワイ語を理解しない僕にとっては、純粋に声という楽器を使った音楽表現でしかありません。しかし本当の内容を知るにはハワイ語を理解する人が現地でしかるべき機会に聴くしかないのだろうと思います。
純粋に音だけから音楽的な耳で、儀式的、祈祷的、宗教的な内容を聴きとることはできないように思います。
良くも悪くも、ただただ豊かで力強くて、深くまっすぐな本物の音楽を感じ取ることしかできません。
文化そのものを共感することが出来なかったとしても、優れた芸術を人類の共有財産として保存、普及させていくことには大きな意義があると思います。