手放しでの絶賛から辛らつな批判までさまざまなようですね。いいカバーである証拠だと思います。私としては 賞賛 > 批判 と評価をつけたいところです。カバーをカバーとして聴ける人は買って良いと思います。しかしYMO原理主義者は、初音ミクから端を発する各種の"印象"を本家に被せたくないが故、落ち着いて聴いていられないでしょう。そして初音ミクマンセーから脱却できないタイプの人は買ってはいけません。これはYMOのカバーであり、単なる初音ミクのキャラクター商品ではありませんので。
良い点としては、YMOを好きで作ったことが曲で私に伝わってきたところでしょうか。なにがともあれ、カバーとしてまず大切な所だと思います。そして他のレビューにもあるとおりアレンジは各楽曲の「つぼ」にちゃんと触れていると感じます。また、おそらく「中の人」の頭の中にあったであろう"初音ミクをどう歌わせるか"に対する答えがCD上でちゃんと結実していると私は感じました。特にCUE、ロータス・ラヴはうまくはまった感じがしました。ここまで持っていくのはさぞ大変だったことでしょう。
残念な点としては、アレンジの方向性が似通っており各原曲でのそれぞれの個性が薄まってしまっているところでしょうか。そういう意味で、曲によっては上述の「つぼ」を「押さえる」までに至っていないという感じです。そして全体的に音はもっとシンプルになっても良いのではないかと思います。シンセブラスの洪水という感じがしました。テクノポリス、ライディーンは特にそれを感じます。私はこれを「やっつけ」と感じてしまう部分がありますが、今回の企画においての限られた時間と機材での限界というが実情ではないかとも想像しています。あと、私はおじさんなので、ジャケット内部の絵にはちょっと抵抗感が…。(ジャケットの絵は別格、すばらしいと思いますよ!)
そういえば、テクノロジーの進歩で出来ただけだとか一刀両断する人もいるみたいですが、逆にそう言わせてしまうくらい「中の人」が初音ミクをコントロールできたと見るほうが正しいでしょう。他の初音ミクの楽曲を聴いてみればわかりますが、初音ミクさんはそんなに簡単に歌ってはくれません…
あと、初音ミクの出番が少ないとか、乗っかり商品だとお嘆きの方もいるようですが、初音ミクの世界に閉じずもっといろいろな聴き方をしてみることをお勧めします。例えばこのCDで耳に残るフレーズが原曲ではどう奏でられているか。何が加わって何が削られているのか。それだけできっと「だからYMOは聴いていて気持ちいいんだ」とか「だから初音ミクは面白いんだ」とか、いろいろな発見ができることでしょう。そういうネタをくれるという点だけでもこのCDは聴く価値があると思います。
私は「中の人」のYMO愛とこのCDにまで作り上げたパワーに敬意を表します。
このCDは一朝一夕で作られたような安直なものではないですよ、絶対に。