9年ぶりの新作。いかにも彼らしく、昔のジャズやミュージカルを思わせる時にユーモラスで時に哀愁を帯びた曲調ながら、その多くで辛辣な皮肉や諷刺をこめた歌詞が歌われている。
たとえば、3曲目は、陽気な曲調も明るい未来に希望を持つようにという歌詞も一見楽天的だが、どうやらアメリカにやってくる移民たちに向けて「もうじき奴らに取って代われるさ」とか「世界の頂点に立てるさ」と言っているらしいのが一筋縄ではいかないところ。4曲目は、アメリカ人は悪い人たちでも卑しい人たちでもないし、ブッシュ政権の連中はアメリカ史上最悪だが世界史上最悪というわけではないと言って、スペインの異端審問だのヒトラーだのスターリンだのと刺激的な例を挙げてアメリカを「弁護」しているのだが、裏を返せばそれらと比べられるようなものだという皮肉だろう。5曲目は、アメリカ人たちは世界で最も豊かな国にいながら夫婦ともに二つの仕事を持って必死に働いていることに疑問も持たず、金持ちがより金持ちになるだけの社会に文句を言うのはジャクソン・ブラウンぐらいだ、と歌う。6曲目もやはりそうした社会と金持ち連中への皮肉が込められている。7曲目は、学校も家庭も地域社会も崩壊した現在のアメリカの子供たちに、「コリアンの親売ります」という歌。彼らはきちんと規律を叩き込んでくれるし、勉強や習い事にも厳しい、どのクラスでも一番できるのは彼らの子でしょ…といった調子。(なんだか苦笑を禁じえない。)
それら以外も、心臓発作で死にかけて神様に会ったというタイトル曲や、同じ思い出話を繰り返す老齢の父を思い出しつつ年を取った自分に重ねる9曲目など、ユーモアとペーソスに満ちた彼らしい曲ばかりだ。また、2曲目の冒頭のストリングズがレイ・チャールズの「ジョージア・オン・マイ・マインド」を思わせるのも興味深い。
35分ほどの短くて地味なアルバムだが、この秋じっくり味わいたい1枚だ。