30年も昔、テレビで途中から見たこの映画のことは、今では何か大切な人生の思い出でもあるかのように思い出されます。それほど10歳ぐらいだった私に強烈なインパクトを残した作品です。
自殺ばかりを繰り返す(全部、狂言ですが)金持ちの家の息子ハロルドが、赤の他人の葬式に出席すると、やはり故人とは全く無縁のくせに出席しているおばあさんモードと出会います。20歳にして死ばかりを追い求める少年と、70代にして生きることへの喜びと、生命に強い関心を寄せる女性との不思議な恋物語がコメディータッチで展開していきます。
いい映画にはよくあることだと思うのですが、この作品を見ていると、いい場面の一つ一つが独立して心の中に強い印象を残していきます。私の印象に残ったのは、二人が夕暮れ浜辺に腰を下ろしてロマンチックなムードになったところでハロルドがモードに指輪プレゼントするシーン。感動したモードはその場で、いきなりぽーんと指輪を海に投げ込んでしまいます。そして、あっけにとられているハロルドに、彼女独特のおおらかな笑顔を浮かべて「こうすれば、この指輪がどこにあるのか、二人だけに永遠にわかるでしょ?」
UCLAの映画科の大学院生だったコリン・ヒギンズが卒業制作で書いた脚本を、ハル・アシュビーが1971年に映画化。アメリカでは全く泣かず飛ばずだったのに、未だに作品のホームページがあるほどカルト的な人気を持つ作品です。確か文学座が芝居として演じたこともありました。(ちなみに邦題は「少年は虹を渡る」)
字幕つきの作品だったら最高なんですが、すこしでも英語がわかる方なら見てほしいです。今の人生に閉塞感を感じたら、学校や会社をサボって、他の人が働いている真っ昼間に一人で見てほしい。そして見終わったら、やっぱり学校や会社をサボって(笑)一人で海に行ってほしいです。
ルックスもセクシーさも取り払った後に残る、女性の永遠の魅力を体現したかのような存在がモードです。その役を演じきったルース・ゴードンは、1985年に惜しくもこの世を去っています。