この作品には、派手な銃撃戦も、非現実的な国際的陰謀と言ったものは、一切出てこない。それでいて、読者のありふれた予想を裏切る展開で、ぐいぐいと読者を作品の世界に引きずり込んでいる。主人公ジョン・レインは、ゆるぎない価値観を持ちながらも、人間の弱さ・悩みを抱えながらも意志の力で自分を制御している極めて魅力的な男である。それでいて、事務処理をするがごとく、人を殺すという極めて危ない人物でもある。従来の人間離れしたサスペンスものの主人公と異なり、リアルな人間として描かれている主人公の魅力がそのままこの作品の魅力と言っても過言ではないだろう。そして、リアリティにあふれる人物を描く一方で、「都会」をしっかりと浮き彫りにしていることもこの作品の大きな魅力の一つとなっている。最近繁華街で設置されている監視用カメラや住基ネットとの関係や、ヤクザの社会的な位置付けなど、日本の社会が抱えている問題が上手く描かれている。外国人の目から見た日本は、今更ながら極めて新鮮で、真実が含まれている事を改めて認識させられた。数年間の日本滞在経験をもつ作者には、次作以降も辛口の日本観察を披露してもらいたい所である。1作目より2作目、2作目より3作目が楽しみとなるシリーズは滅多に無い。3作目の発売が待ち遠しい。