全く予備知識なしで読み始めたので、タイトルをアルファベットにしている意味には、なるほどと感心した。
19世紀末当時のパリ画壇動向についてはかなり知っているつもりなのだが、エミール・ガレのことはくわしくないこともあって、高島北海という人物は全く知らなかった。北海の伝記部分はいかにも歴史小説という感じである。一方現代の部分には北海のひ孫だという男が出てきて、フィクションには違いないのだが、それにしてもどこまでが実際のことなんだろうと疑問を持ってしまう。読者にそんな疑念を起こさせるのも、作者の計算のうちということか。
この入れ子構成については、最初のうちはいい意味でも悪い意味でも特別な感想は持たなかったのだが、最後になって現代の作家による取材で謎解き的興味を出す構成が、全体をうまく締めくくっているように感じた。そこから逆算すると、これくらい現代の部分を入れるのがちょうどいいくらいであろうか。