価格破壊に近い異例の安さが話題を呼んだ作品。
歌詞とクレジットを淡々と記載した歌詞カードをはじめ、
赤・黒・白しか見あたらないアートワークはバンド自身が手掛けた。
さらに録音場所はスタジオではなく、地下室様の部屋が選ばれた。
メジャーのレーベルからリリースされた作品にしては安っぽい音質であるが、そういった事情に由来している。
しかしそれを逆手にとったとでも言おうか、
密室的な音像を呈し、本作の個性を際立たせる結果となった。
言ってみれば中期のThe Policeを彷彿とさせる音、
すなわち、ある種知性的であるが、
リスナーと音源の間に微妙な距離感を与える冷たさすら感じさせるサウンド。
タイトルの「ヘルシー(Healthyと音が通底)」と、不健康さを喚起するアートワークとの対比も良い。
すべて計算しつくされているかのようである。
JPOPを聞き慣れた耳にとってはかなり違和を感じるサウンドであろう。
曲数の多さもあり、一曲ごとの作り込み具合はこれでも大分減っている。
しかしどの歌も指向はネガティブであり、決して気味の良いものではない。
そのせいか、ファン以外にはあまり訴求しないアルバムであるとも聞く。
だがそれはこのアルバムの一番大事な部分を見逃している。
14曲救いようのないネガティブを聴かされた後、
僅かながらの報いとしてラスト「パレード」が流れてくるとき、
何故かどっと押し寄せてくるカタルシスである。
最後には充実感が残っている。本作の中毒性はここに起因しているんだろう。
おそらくこの作品は、
syrup 16gという、
日本のポピュラーミュージック史に消せない足跡を残したバンドを象徴する一枚として語り継がれる作品である。
再評価の機運をじっくり待ちたいものだ。