このアルバムはいろんな意味で、万全を期したアルバムとは言い難い。どちらかというと、リハビリ的意味合いの強いアルバムだと言えると思う。というのは、まず既発表曲が多いということがあげられる。M1、M3、M5、M9がジミー・ネイルがやっていたTV番組用に書いた曲であるし、7分以上ある大作のM8はシェールのアルバムのために書かれた曲である(シェールはこの曲をあまり気に入ってなかったようだが)。また、これ以前に未完成のまま制作が頓挫してしまったアルバムが多数あり、パティが心身ともに疲労し、音楽業界に失望していたことも理由のひとつだ。それらの停滞状況からの最もやりやすい脱却の方法として、今作の形式が取られたというふうにも考えることができる。
さらに、今作ではついにメンバーが、パティ以外のメンバーは弟のマーティンだけになってしまったことがある。これまで、コーラスのウェンディ・スミスが果たしてきた役割は、非常に大きく、洗練された楽曲にドリーミーな彩りを添えてきた。それがなくなることにより、かなりパーソナルな色合いが強まり、全体のイメージにソロユニットのような印象を与えている。
しかし、それでも各楽曲のクオリティは異常に高い。カントリー&ウエスタンという異色のコンセプトを掲げていても、やはりパティの作る曲は、実に意匠を凝らしたもので、特有のセンチメンタリズムが溢れ出ている。これまでのアルバムよりもドリーミーさは減退した分、今回は男の哀愁みたいなものが増している。