久々に聴いて、このアルバムの評価がグッと上がった。
本作発売当時のベックファンからは賛否両論あったように思う。いくらベックがクルマ好きといってもアルバム・ジャケットもイケテナイし…。グラミー賞受賞作品ではあるが、その評価は、当時のベックファンからは必ずしも好意的であったとばかりはいえなかったように記憶している。
1960年代終わりから1970年代最初にかけて、マイルス・デイヴィスや、マイルス門下生がジャズをベースとしながらも、他ジャンルの音楽(特にロックやファンク)を呑み込みながら新たな音楽が提示され始めた。クリームやジミ・ヘンドリクス亡き後、あのパワーやスリリングさを継承したのは明らかにジャズ系ミュージシャンであった。他ジャンルを呑み込んでの活動はプログレッシヴ・ロックも同様であるが、こちらはジャズやクラシックのテクニックを「背伸びして」取り入れようとするところがあったが、ジョン・マクラフリンによるマハヴィシュヌ・オーケストラは、圧倒的なテクニックとインド音楽のリズム・奏法などとロックの巨大なパワーをとりいれた斬新さを以てロックファンに衝撃を与え、ジェフ・ベックも大きな影響を受けたことはよく知られている。
そういった状況で、ロック・サイドから、この新たな音楽スタイルに呼応し成功したのが、1975ブロウ・バイ・ブロウ、1976ワイアードの名盤をリリースしたジェフ・ベックであった(サイドメンをジャズ系、ブラック・ミュージック系ミュージシャンで固めることが成功の一要因)。1980のゼア・アンド・バックはそこそこの出来であったが、1985フラッシュにがっかりしたベック・ファンは、やや久しぶりのギター・インスト・アルバムである本作に、大いに期待していた。しかし、1975〜1980あたりの音楽の再現を期待していた向きには肩透かしの感は否めなかった。だが、2010年現在から見ると、このアルバムの先進性はマイルスの1970ビッチェズ・ブリューの革新性に相応するもののように思われる。本作発表後10年経って新作1999フー・エルスを発表し来日公演も果たし、その後は毎年のように来日もし、スタジオ・アルバムとライヴ・アルバムをそれぞれ3枚発表しているが、その路線は基本的に本作を継承している。マイルスが、常にハービー・ハンコック、チック・コリア、ジョー・ザヴィヌル、ジョン・マクラフリンといった若手から音楽的活力を得ていたように、ベックはテリー・ボジオとトニー・ハイマスから大きな活力を得たようだ。本作が「〜With Terry Bozzio And Tony Hymas」と二人の名前が明記されるのはトリオメンバーであることの明示以上の意味がある。現在のベックの活躍はこの二人の存在なくしてあり得ない。