リック・ネルソンの歌っている姿を、ご覧になったことがあるでしょうか?
ニコリともせず、パフォーマンスらしいことは何もせず、ただひたすら無表情に、マイクに向かって、誠実に歌いあげるのです。
彼の全盛期(あくまで売れていた時期という意味で)、それは57年から62年ごろに当たるかと思いますが、40年生まれの彼は、その頃まだ10代か20代そこそこでした。
つまりまだ本当に若かったのですが、しかし歌声の成熟ぶり、しぶさ、味わい深さ、ノリの良さといったものは、完全に青年のそれを超えた、きわめて立派なものでした。
ただひたすら音楽に素直に、繊細に、飾りっ気もなく、息吹きを注ぐことのできる、稀有の歌い手だったと思います。
ここに収められているのは、そんな彼の代表的なラヴソングの数々...
曲目はやはりその全盛期から選ばれたもの(ヒット曲)が大半で、最後にほんの少し、70年代のものも含まれています。
彼はまず第一にエルヴィスを思わせるようなロックンローラーでしたが、こういったしっとりとした曲種もまた同様に得意であり、大変聴きごたえのある歌声を披露してくれます。
捨て曲なしですが、僕のおすすめは有名な“Lonesome Town”に“Young World”、バディ・ホリーのカヴァーである“True Love Ways”や、あと“Dream Lover”といったところでしょうか。
この時代特有の白黒映画のような雰囲気に、うっとりと、そしてしみじみと浸れる一枚です。
とくにリック・ネルソンという歌手にまだ触れたことがない方にとっては、彼のナイーヴな側面を知るための最初の一枚として、自信をもってお薦めできます。
ちなみに僕は彼を、敬意をこめて「リック・ネルソン(Rick Nelson)」と呼んでいますが、一般にはむしろ「リッキー・ネルソン(Ricky Nelson)」の名で知られています。しかし「リック」でも特に間違えではありませんので、どうぞ気になさらずに。