HIPHOPとはアメリカの裏の歴史そのものであるし、どの音楽よりメッセージ性に富んだもの。だが、それが故にどうせ日本人にはそのひとかけらもわからねーよ、それがわからなきゃだめなんだから、というイノセンスの心配からHIPHOPを敬遠しては勿体無い。2PACのHIPHOPは普通に音楽として聴ける。バックで甘美なメロが鳴っている上にライムを叩きつけてゆくし、悪っぽいことばの向こうにも、彼の心の素直さや純粋さも垣間見れるからリスナーのこころに伝わるものは大きい。
その象徴がやはり「ライフ・ゴーズ・オン」。ガンジーの言う、「人は憎しみ合うにはあまりに人生が短い」とのことばのように、DISりあうことが引き起こすのが暗殺ならその負の連鎖は虚しくないか、何の意味があるんだ、そんな葛藤が密かに行間から溢れている。しかしそのヘヴィな主題とは対照的にこの曲に流れているのは、どこまでもひたすらに美しいメロだ。前向きなのだ。だから、普通に車中のBGMとして最高の曲なのである。そのメロやビートを堪能した後にライムの深さについて思いを運ぶと、実に趣き深い。
だが、今となってはその非常に優しいメロは非常な儚さをもって聞こえる。生きることを歌ったその彼が、結局その凶弾に倒れてしまうのだから。何とも皮肉で悲しいことだ。何だかその美しいメロと曲の穏やかさは、まるで天国から2PACが「生きろ」と教訓をのべているようだ。ライムの中にも自分が死んだら、という話が出てくる。彼はもう「死」の宿命を意識していたのか。だからこそ「生」のうたをうたったのではないか。最後のスピーキング中に彼が少し笑う部分が印象深い。