元々の『グレイスランド』自体は、1986年5月発表。当時貿易ボイコット中だった南アフリカで録音。故に当時このアルバムは激論を呼んでしまう。ライナーでポール自身が書いているがこのアルバムを作ることになったきっかけは1984年の夏に友人から受け取った1枚のアルバムのテープだったそうである。そのアルバムの名前は『ガムブーツ:アコーディオン・ジャイブ・ヒッツvol.II』。ここでの南アフリカのストリート・ミュージックである昔のR&Bに似かよったグルーブを持った『ンバカンガ』にポールはすっかりシビレテしまい。重い腰をあげて再び創作活動を開始することになったのである。彼はガンガン南アフリカのご当地レコードを集め始め、ついには往年の名コンビであるプロデューサー/エンジニアであるロイ・ハリーとともに南アメリカへと向かうことになるのである。
このDVDでも出てくるが南アフリカへ向かう直前のポール・サイモンはスランプのまっただ中で、全てがうまくいかない状態だったようだ。原因は『ハーツ・アンド・ボーンズ』の大失敗とS&G再結成ツアーの失敗だったらしい。しかもツアーの途中で結婚したらしいのだが、それも思うようにいかなかったようだ・・・・。で、この時のテープの音だけを求めて、手持ちを1曲も持たない状態で、ロイ・ハリーと南アフリカへ行ってしまうのである。プロにあるまじきクレージーさなのだが、現地の人のすばらしいアーシーさに触れ、見事全く新しいポール・サイモンの音楽ができあがるのだ。
最終的にはこの時レコーディングしたデータをアメリカのスタジオに持ち帰り、色々足し算して完成したのが『グレイスランド』だ。本作は、新しいポールの誕生の記録である。