この男が調子がいいときは、ブラーは絶好調になる。次のブラーのフル・アルバムはすんごい作品になるんじゃないか、と闇雲に当時、確信したグレアム・コクソンの2ndソロ・アルバムの登場だ。とにかく、今作は無邪気な笑顔が大全開。だって1曲目から、自分の好きなスケート・ボーダーの名前をとって"ジェイミー・トーマス"だもん。アメリカのボストン・ポスト・パンクのミッション・オブ・バーマの曲までカバーしちゃって。サックスやピアノを含め様々な楽器を自分で演奏し、なんだかとても楽しそうにパンクからベビー・ロック、それにノイジーなプログラミング・サウンドがあるかと思えばアコースティックな柔らかさも含まれて。ふふ。
ここで「僕の好きな世界」を縦横無尽に走り回っているグレアムだが、しかし、その世界を閉じたものにする気は毛頭なさそうだ。つまり、前作が作ることで自身が行き着く開放感とカタルシスに焦点が当てられていたとしたら、今作は「聴かれる」ことを意識していると思えてならない。それは歌詞に目を向けるとより鮮明で、まるで奥田民生のような不条理詩人っぷりを発揮しながら、研ぎ澄まされた目線による生の真実がいくつも隠されている。「彼はヒーロー/僕はゼロ」「毎日が煙草と失敗/僕が諦めて死ぬまで煙草と失敗」--これらの一見ネガティブこの上ない言葉を、一緒に世を儚む空虚さとしてではなく、一緒に時代を生きていく勇気にも似たリアリティとして歌うグレアム。だからこそ、聴いていると不思議にグイッと腹の底に力が湧いてくる。