今回のリマスターで最もその効果に興味があったのがこのアルバムだ。ジャマイカ録音のこのアルバムはえらく音が曇っており、モコモコのダンゴ状態であったからだ。しかし、この混濁した音はマイルスの「オン・ザ・コーナー」やソフト・マシーンの「サード」同様に「狙った」ものであり、リマスターで「スッキリさわやか」にされても困るし、そうなるわけはない。
ヴードゥー教を思わせるどっしりしたリズムのオープニング「ダンシング・ウィズ・ミスターD」。濁った音は変わりないが、一聴してすぐ音の分離が良くなったのがわかる。ベースの音も聴き易くなった。怪しくも魅惑的なオープニングだ。
ビリー・プレストンのニューソウル的なエレピで始まる「100年前」。組曲風に展開するストーンズには珍しい曲。エンディングのミック・テイラーのソロが冴えまくる。
キースが歌うドラッグ・ソング「夢からさめて」。かつてビートルズはドラッグ体験を華々しく優雅に曲に反映させたが、ストーンズはもう奈落の底に落ちそうだ。ジャンキーの戯言のようで人懐っこい不思議な曲。
「ドゥ・ドゥ・ドゥ」は名曲。構成の見事さ、ホーンの効果的な使い方など、実に考え込まれたアレンジだ。
キースの跳ねるベースがカッコイイ名曲「シルバー・トレイン」はリマスターによりグルーブ感が増して聞こえる。
最初は変な曲と思ったがよく聴けば良質なソウル・バラードの「すべてが音楽」はイントロのベル音がリマスターにより実に生々しい。
フィナーレはもろチャック・ベリーの「スター・スター」。やはりこういう曲がないとストーンズのアルバムは締らない。
全体的に音の混沌とした感じは変わりないが、分離が良くなった分かなり聴き易くなったと思われる。だがこのアルバムの狙いはあくまでタイトル通り「山羊の頭のスープ」であり、混沌としながら濃密な味である。