『Getz/Gilberto』は、ボサ・ノヴァを代表するアルバムだと言われています。実際よく売れましたし、アストラッド・ジルベルトが「Girl from Ipanema(イパネマの娘 原題Garota de Ipanema)」を歌ったことによって、彼女が世に知られた初出アルバムとして現在でもよく聴かれています。
ヨーロッパで不人気だったスタン・ゲッツが、アントニオ・カルロス・ジョビンのサウンドとジョアン・ジルベルトの歌と出会ったことは幸運をもたらしました。このセッションは異文化コミュニケーションの一つの姿だと思います。時折、ゲッツのジャズ・テイストが雄弁になりますが、ブローすることなく雰囲気を合わせています。
ジョアン・ジルベルトの力の抜けたヴォーカルがいいですね。軽快な「Desafinado」では、ポルトガル語が本来もっているリズムをよく音楽に乗せています。この軽みの極致がボサ・ノヴァの真髄と言えましょう。
「Corcovado 」の1節目を英語で歌うアストラッドと、2節目を歌うジョアンの雰囲気は抜群でとても良い感じです。その後、この夫婦におとずれる離婚をこの時は誰も予感すらしなかったと思います。
「So Danso Samba」も典型的なボサ・ノヴァ・サウンドです。カルロス・ジョビンの曲をゲッツは好きに吹きまくっています。ジョアン・ジルベルトが歌いたい音楽とは少し違うでしょうが、ジャズとボサ・ノヴァの融合という意味では成功した演奏だと思います。